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○なんせんす・さむしんぐ○

美術や音楽の感想とか、動物中心のイラストのブログ。

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12月2日拍手お返事

三郎丸氏>
 時が経つのは早いものだ、というより記事を書くのが遅すぎた(笑)

 そして教会巡り、通常の女子旅より多めで申し訳なかった(笑)
 本当はしっかり勉強(どこに何があるか把握して目的を持って見に行く)してから行きたいとこなんだけどね。それをしたら、多分もっと多くの教会を片端から見ていくことになっただろう(笑)
 教会そのものもなんだけど、色んな建築様式の違いとか、入り交じっているのが面白くってつい、ね。あとバロック聖堂の本場の…いやまあ止しておこう。
 時代時代の建築様式ってやつがよく表れているのが、聖堂という訳…。教会とか建物(崩れているのも含む)は何とか美術展で日本に持ってこれないでしょ。

 シャルダンの木苺は、ある意味トラウマ(笑)
 あの展覧会のあとは何となく赤いものを口にしたくて、適当なものが見当たらなかったので、取り敢えずアセロラドリンクを飲んだのですが、これじゃない感が多いにありまして。

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音楽家の肖像



 …パグがかつらかぶったら可愛いなって思って。
 音楽家とか言いつつ着ているベストがやたら派手なのは、パステルセットにシックな色がないからです。
 こう見えて鍵盤の腕前は結構テクニシャン(無茶設定)。

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イタリア旅行記 サン・ピエトロ、コロッセオ、フォロ・ロマーノ、街歩き

 さて、この記事でおしまい。
 ティヴォリに比べてこの4日目がかなり短くてバランスを欠くとか。。。いや、もう少し書こうとしたけど、コロッセオとフォロ・ロマーノのあたりで延々廃墟写真になるので、カットしました(笑)

 さてさて。ついにサン・ピエトロ寺院に行く時が来ました。
 第一日目に美術館は行ったけど、諸事情により聖堂と別々に行くことにしたのです。
 ベルニーニの列柱の腕に囲われた楕円形の広場。
 その列柱の間を通り抜けいよいよ中へ。

 さあ、右手に見えるのがかの有名なミケランジェロのピエタです。


 遠いよ…!  

 柵が張ってあって、十メートルは離れているでしょうか?
 豆粒のようなピエタ。
 ミケランジェロパワーが全然伝わらない。いや、離れていても傑作にはオーラがある、それは認めましょう。とはいえどんなに傑作だろうと、いくらなんでもこれは無理。この距離で感動するなんて、そんな眼力(と視力)は私にはありません。
 これだったら、パリのサン・ジェルヴェ教会の裏口にあったピエタの方が感動した。まあ、サン・ジェルヴぇもまたティヴォリ的な巡礼地だったこともあるのですが…。
(いや、確かピエタだったような気がするのだけど。人気のない裏口からそっと入ると、それが見下ろしていて、ゴシック建築の丈高い色硝子から降る光の粒が、マリアの頬に色とりどりに散っていた。)
 因みに、見せたいだけのサン・ジェルヴェの写真。
 
 さらにちなみに、そのピエタ(確か)が写真に収まっていないで、左の似たような別の写真を撮ってあるのは、その裏口の彫像の不意打ちに気圧されてレンズを向けるのが恐れ多く気が引けたからなのでした。
 さらに脱線すると、サン・ジェルヴェは20世紀に入って戦争で爆撃を受けて、半分くらい壊れてしまったので、このステンドグラスは新しいもの。その中で16世紀くらいのオルガンは残って現在パリ最古だというのが、きっとサン・ジェルヴェの歴代オルガニストの執念かも知れない(笑)

 で、イタリアにもどって。
 ピエタには微妙にがっかり……。これは見たうちには入れられない。
 それにしても屋内でこれだけ離れることが出来るのが凄い。というだけのことでも感動しておきましょう。悔し紛れに。
 ピエタ以外にも、いちいちの彫刻が無駄に躍動的で面白い。ドレーパリーが目に楽しいです。翻る衣紋は夢です。
  
ヴェロニカさん。そして後陣のごってりわらわら装飾が相変わらず好きだ。それを指さす彫刻も素敵だ。


 外は再び楕円形の広場。
 ある一点があって、そこに立って回廊を見ると、4列に並ぶ全ての柱が重なって一本に見える。おばけ煙突の原理で。面白い。

 それからツアー一同はコロッセオへ。
 壊れたというより、ローマが廃墟と化してから建築資材として切り出されていったけれど、結局使いきれずに遺ってしまったコロッセオ。

 石だけでなく、その石材を内部で補強していた鉄までも採りだされてしまって、あちこちに採鉱の穴が空いている。・・・補強材、抜いちゃうとか有り得ないだろ。

 発掘された装飾や、観客たちの捨てたごみ、暇潰しのいたずら書きなんかが、貴重な史料として大事に展示されています。

 関係ないけど、コロッセオに住んでいるらしい猫。

 中は大きく、ここで殉教した人々のため、十字架が立ててある。

 まさにこの場で、殉教した人々がいた…個人的には、どんな聖遺物より実感が湧きます。
 コロッセオなんて恰好の石材が、現代までこれほど遺ったのは、この為なのかも知れない?


 その後、やはりベタにフォロ・ロマーノなど。

 ローマの都は、テヴェレ川の土砂が堆積していくたびに、その上にその上にと新しい建物を建てていったのだそうで、つまり深く掘れば掘るほど古いものが出てくる。
 が、深く掘るには折角出土したより新しい時代の遺跡を壊さないとならない。もし今地上に出ている遺跡が歴史的に重要ならば、それを壊して堀り進むことは出来ない。
 また、都の衰退の後もなお今まで使われ続けているローマ建築もあり、当然その下を掘ることも出来ない。周りだけ掘ったものだから、教会の一つは入り口が見上げるばかりの場所になってしまっていたり。

 イタリアが統一されてから、より本格的、科学的な発掘・保存が始まった。それから現代までに、フォロ・ロマーノはすっかり周りの街からすり鉢状に低くなっています。

 今は全てあらわで各遺跡を根元から見ているけれど、ピラネージの時代は凱旋門も柱の残骸も半分まで埋まっていたのだそうです。
 クロード、ピラネージ、ロベールにフラゴ、そしてこの一連の記事の冒頭に無理やり呼び出したゲーテも、皆このはるか頭上を歩いていたのです。
 
 
 

 私は根本は歴史ではなく美術の愛好家なので、ローマの建築がクロードの廃墟のまま遺らないで、史跡になってしまったのが、本当に惜しい。

 関係ないけど、フォロ・ロマーノに住んでいるらしい猫。

 
 すり鉢状のフォロ・ロマーノを再び登って、そこを後にします。
 例の有名なローマのシンボル、雌狼を発見。

 なんだこの偽物感・・・(笑)とくに狼の足元の物体とか・・・。まあ、冬だからね。

 もう少し坂を登ると本物がありました。いや、本物と言うと語弊があります。野ざらしのこれもコピーで本当の本物は博物館にちゃんと収蔵されているそう。
 坂を登りきると騎馬像のあるカンピドーリオの丘に裏口から浸入します。

 ああ、ここ、先日の展覧会で出てた素描でロベールが描いてたとこだ…。

 さて、ゆるゆる街歩きです。
 テヴェレ川の方のマルセラ劇場、フォルトゥーナやウェスタ神殿など。
 ようやくイタリアカラスの写真を撮る。この地のカラスは黒と灰色の2色なのが珍しいです。
ウェスタ神殿の前は小さな公園のようになっています。

夜に下から光をあてるため芝生にはえている照明器具の上に一羽のジョウビタキが止まっている。 カラスは白黒だけど、ジョウビタキは色も変わらず、尾を振りつつ、頭を下げつつ、時折さっと芝生の上に舞い降り、またすぐ見晴らしのいい照明器具の上に戻っていきます。

 イエズス会のイル・ジェズ聖堂に行きたかったのですが、3時頃になっても扉は開かない。 もう少し時を置いたら開くかしら、とまた周囲をぶらり。
 このままイル・ジェズ聖堂が開かない可能性が多いにあったので、埋め合わせにふと見かけた聖堂にふらりと立ち寄ってみる。
 サンタ・マリア・ソプラミネルヴァ聖堂は、超すっきりした入り口正面とは打って変わって、内部は身廊の天井が交差した尖頭ヴォールトで、その曲面は鮮やかな青一色、美しい星々がちりばめられている。

 おや、ミシェル・フイエの「イタリア美術」という本には「イタリアでゴシックの時代にゴシック建築はそんなに流行らなかった」と書いてあったから、こんなにステンドグラスもばっちりな、がっつりゴシックなのは結構珍しいのかも。いえ、いつ建てられたのか知らないけれど。
 そして、事前に調べることもしていなかったので、特に狙った訳ではないけれど、そこにはローマに来て以来俄かにファンになったフラ・アンジェリコが眠っているのだそうです。

 再びイル・ジェズ聖堂。開く気配は無し。
 もしだったら天井画が見られたはずだ。まろりーの見たかったジェズ聖堂の天井画はリンク先のウィキペディアでご参照ください。
 バロックなるものに多大なる影響を及ぼしたというイエズス会。イエズス会といえばバロック。その本拠地・総本山(たぶん)とも言えるイル・ジェズ聖堂。うーん、見たかったな。
 聖フランシスコ・ザビエルが祀られていて、彼は日本の守護聖人であるらしいよ。

 ぶらぶら周りの街並みと、さりげなく点在する遺跡を楽しみながら、女子な感じのガイドブックにあったお店など立ち寄る。
 イタリア旅行なんて銘打っているけど、ローマは多分、正確にはイタリアでないだろうと思う。これだけの保存すべき遺跡を抱えて、これで「近代的発展」なんて出来る訳ない。

 日も大分傾いて来て、最後に向かうはサンタ・マリア・マッジョーレ聖堂。
 この旅の最終日の最後の観光地としては最高にふさわしい場所で、何故ならそこにはベルニーニの墓があるからなのです。

 入口正面の装飾はちょっと変わっている。
 2階がバルコニーのようになっていて、そのさらに上方を支える柱と柱、アーチの隙間から壁のモザイク(多分)のキリストが見える。そのバルコニーの両端に誰かいる、かと思いきや、天使の彫刻でした。

 左の天使さんが、こっち見てる…。若干、夜動きそうで不気味かもしれない。

 1日が終わろうとする時の、沈みかけの太陽の、赤みを帯びた光が、聖母子像を黄昏の暗がりから照らし出し、背後の古い金のモザイクを輝かせている。

 極美な! この旅行中見た、最もダイナミックな、ドラマチックな陰影でした。

 でも結局、ベルニーニの墓の場所はよく分からなかった。宿に帰って調べてみると、内陣の辺りの床だとか…。
 あっ、その辺で何かアルファベットの書いてある床石を踏んだぞ! あれだったのか、ごめんよベルニーニ!

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 追記。  最後の晩餐は、ふとドトール的なカフェで見かけたタルト。  
 友よ、なぜ私がこれを特に所望したか分かるかね。
 少し前に来日して素敵だったシャルダンの木苺の籠が美味しそうだったのをまだ引きずっていて、やあイタリアであの絵からこぼれたような木苺に会ったぞ、と。

 追記2。道端で買ったお土産。ファブリさん。

  18世紀のグランドツーリストを気取って、当時のお土産として大人気だったヴェネチア絵画(の画集)を買ってみたよ。
 ロンギとグァルディ。・・・ヴェネツィア行ってないのにね。
 商品に直にマジックで2ユーロとか書いてあるし。2ユーロでも高くないか…!? しかもあれです、読めもしないイタリア語です。
 しかし、小型とはいえロンギ単体の画集なんて初めて見たわ…。流石はイタリア。

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横浜 プーシキン美術館展感想


  横浜美術館プーシキン美術館展~フランス絵画の3百年~見てきました。

 プーサンからレジェまでどの絵も素晴らしく、本当に楽しかったです。
 概要は、副題のまま、スタンダードなフランス絵画をおよそ3百年くらい時系列で並べるもの。

 最初はプーサンのバロック古典主義絵画ですが、続く3点ほどは、カラヴァッジョ、ないしはオランダのカラヴァッジョ追随者風の絵。
 
 
シャルル・ル・ブラン<モリエールの肖像>
 モリエールのいつものもふもふの鬘も素敵なのですが、それ以上に額縁の左右非対称なロココ調装飾のが興味深い。←ただのロカイユ装飾が大好きな個人的関心です。
 額縁の上部中央に装飾された組み文字が彫られていて、誰のイニシャルなんだろう。額縁チョイスはこのイニシャルの人のセンスでしょうか。

 グリムーのリコーダーを持つ少年。こういう絵が単純に好きだ。…図版入手ならず。雰囲気こんな感じです。
グリムーのグーグル画像検索
 例えば、こういうオランダ絵画と同系統かしら。本来ならユトレヒトのカラヴァッジョ追随者が来るところを、ハールレムのモレナール。微妙に彼のファンなので、モレナールを見せたいだけです。
ヤン・ミーンス・モレナール<リコーダーを持つ少女>

 ええと、モレナールはおいといて。
 柔らかいレンブラント風の光。服装もちょっと古風でイタリアっぽく劇がかっていますが、顔がとっても当世風のロココ顔。モレナールのようなオランダのカラヴァッジョ風の絵より、やや灰汁が弱められているようです。いや、モレナールはモデルの顔が濃すぎるから比較しづらいけど。
 羽飾りの鍔なし帽子を被る紅顔の少年、その顔にかかる影や音楽には若さの移ろい、この世の儚さとか読み取れるかしら?
 そうでなくても、こういう単純な絵が単純に好きなのです。

 蝋燭の灯りの下で手紙を読む女性。これも上半身のクローズアップ。観者から中身の見えない手紙と蝋燭の一点放射の光がドラマチック。手紙の内容は、彼女の優しい表情から類推されます。蝋燭は背景を全て闇に沈めて、彼女の顔=心情だけを浮かび上がらせている。

 クロード・ロランの理想的神話的風景画。
クロード・ロラン<マルシュアスのいる風景>
  前景で小さく描かれているのは、木に縛られたマルシュアス。竪琴を持って座っているアポロンはマルシュアスの前で刃を研ぐ男に指差しで彼の皮を剥ぐよう指示している。
 技芸の神様アテネが作って捨てた笛(つまり最高の性能の笛)を拾ったマルシュアスが、その腕前はアポロンにも勝ると豪語したため、怒ったアポロンが音楽勝負を仕掛け、負かした罰ゲームが、この皮剥ぎ。
 かなり凄惨な神罰の背景で、それとは関係なしに、これでもかという美しさの穏やかな風景が広がり渡ります。
 謎の神殿の浮かぶ湖、崖の上にはドーム天井の古代の神殿、そこから流れ落ちる滝、道の奥まで続いていく巨木の森、それら全てを包んで金色に霞む大気。
 絵の中に首を突っ込んで白くけぶる大気を胸一杯吸い込んで肺の奥までもやもやにしたい。

 ブーシェのお師匠、ルモワーヌの素描の寓意。

 霊感を受ける画家とモデルの寓意画。画家もモデルも霊感の擬人像も、人物は全て可愛い?むっちりプットー(童子)で表されています。そしてこういう天使的な絵がポストカードの鉄板なのです。
 子供にしてはいやに目付きの鋭い画家は、ぼさぼさの髪がアーティストっぽい(笑)
 背景は古代調で、それによってデッサンの正統性をアピールしているのかなぁ。
 モデル役のプットーの被る布を除けようとするプットーと、ちょっと抵抗するモデル役のプットー。すんなりとはその姿を見せてはくれない真実を画家の眼力と技術が顕らかにする…! みたいな、画家がそういうように描くとちょっと含蓄があります。
 でも同時に画家とモデルという関係をちょっと思い出していたり。
 ブーシェも大人の職業や牧歌的な恋愛を子供の姿でという絵を良く描いた(注文が多かった)けど、お師匠さんも描いているのは、流行りの画題だからなのかな。

 次に続くのは、軽快な主題の室内画3点。
 ランクレ。間男が奥様にプレゼントを贈るために、その夫からお金を借りたので、返済を迫られたとき、奥様にお金払って貰う、というコントらしい。ありそう。ちょっと笑える。
 マルグリット・ジェラール、フラゴナールの義理の妹。オランダ絵画を当世風に焼き直したファッショナブル室内画。で、オランダの女性っぽい上着を来ている。まろりーはどうしてもこのジェラールにフラゴナールの面影を無駄に期待している…。
 プレリュード(前奏曲)と題された絵。
 
 もちろん何の前奏かって、その後にアルマンドやクーラントを弾くためではないのは、背後のベッドが物語る。二人とも、結局弾いてないしね。
 とりあえず、楽器(特に猫脚クラヴサン)の描かれた絵ということで脳内ストック。

 さて、ブーシェ!
フランソワ・ブーシェ<ユピテルとカリスト>
  この絵のために、何度プーシキンに行きたいと思ったことか!
 数あるブーシェの中でも最高傑作の1つじゃないかと思います。
 主題はユピテルとカリスト。とはいえユピテルは狩猟の女神ディアナに化けているので、画面には二人の女性が描かれることになります。
 ディアナに従うニンフのカリストは、全く警戒心もなくディアナに身を預けている。
 …ただ単純に美女二人を絡ませたかったので、ユピテルとカリストの神話はその口実と言われても驚きません。というか、そうでしょ。
 神話の使い方、本当に上手いな…! この後、カリストが毛むくじゃらの熊に変身してしまうのが信じられないくらい(笑)
 まあ、内容はさておき。
 やはりこの絵の神髄はその色彩、色調の美しさにあると思うのです。
 やや白濁した明るい水色とミントグリーン、真珠色と薔薇色の響き。
 その背景の森の人工的な青と緑の軽快な諧調は、奥へと空気遠近法で後退しつつ、人物の肌色を浮き立たせる。
 三角形の構図を取る人物、カリストのレモンイエローと鮮やかな青、ユピテルの赤。その強い不透明な赤が人物の輪郭など辺りに細かく反射して、ほとんど唯一の鈍い茶色のうさぎとともに、全体に中間色の画面を引き締めている。
 三角構図の固さを崩そうと空の水色の中に戯れ舞う薔薇色のプットー。
 この色の響き合いたるや…!
 背景のニュアンスに富む寒色のグラデーション、人物のみずみずしく煌びやかな暖色。
 多分、このユピテルとカリスト(女性二人)でなければ到達し得ない色と構図。ブーシェ特有のきらめく色彩は流行り廃りはあるものの、後にも先にも、この色彩センスはなかなか無い。

 ブーシェの何が好きかって、時にこの絵みたいに甘くて艶めいた思想の無いインテリアを描くけれども、それにいささかも悪びれることもなく、恬淡としていることです。
 言ってしまえば、この物事に関する恬淡さが、理不尽な人生を快適に過ごす事を可能にする…いや、言い過ぎました。ブーシェの絵にそのような教訓は全くありません。ブーシェを弁護したいあまりに、大袈裟なこと言いました(笑)
 同時代の批評家ディドロは正しい! 逆の意味で。
「才能の浪費、時間の無駄。」「何という色彩、何という多様性、何という豊かな着想。ブーシェの絵には、全てがある。真実以外は。」
 この絵の前に真実なんて何であろう。

 そして、絵とぴったりのロカイユ装飾の額縁がひたすら格好いい。
 ロカイユ、それは絶対に左右対称になんかならないという強い意志(嘘です)。これですよ、十八世紀のロココの絵画にロカイユ…!

 割と本気で複製画(ポストカードや大判印刷でなく)が欲しいと思うんだけど、残念ながら自宅に飾るべき相応しい場所が無い(笑)

 カルル・ヴァン・ローのユノ。ヴァン・ローのサインが格好よくて好きだ。
 アイボリーと鈍い水色の色彩がいいなぁ。←だから圧倒的にこの時期の色彩センスが好きだというだけの話。
 落ち着いて大画面でどっしり構えているものの結構若々しく描いてあって、ブーシェのカリストにも引けは取らない。…まあ、少しは年増かな(笑)

 ヴェルネのサルヴァトル・ローザ風と銘打たれた風景画。

クロード・ジョゼフ・ヴェルネ<ローザ風の風景>

 …ヴェルネ、よくやった! 思わず笑っちゃったじゃないの。
 大岩のごろごろする険しい山や、滝川の急峻な流れ、兵士たちなどが描かれた空想の風景画を得意とするイタリアの画家サルヴァトル・ローザ。
 その荒々しいファンシーさが18世紀からロマン派に流行したのですが、それを正々堂々とぱくった…いやインスパイアされたヴェルネ。
 売る気満々だなぁ…(笑)18世紀の受け狙い絵画本当に大好き!
 ちょうど良い位置にある険しい岩のちょうど良い隙間から滝が流れ落ちています。岩場にいるのは武装した男達と、それに交じって女性が1人。その人たちによって、何かの物語の一場面のような、作為を感じます。

 崖の上には古代の廃墟と空気に霞む糸杉。この鉄板フレーズ、クロード・ロランでも使ったし…(笑)
 まあ、ヴェルネがローザをリスペクトしたのと同じ位かそれ以上に、クロードもリスペクトしていることは疑いない。
 ただ、ローザの絵をカラーでそんなに見たことがないのだけど、今まで見たのは暗いめの画面ばかりで、ヴェルネほど華々しい色彩ではなかった。これが、ローザのロココ的変奏と言えるのか、断言出来ないなあ。まあ、ヴェルネの見た大半のローザも白黒の版画だったのでは? いや、適当な感想。

 ヴェルネについていえば、ロマンチック&ドラマチックな月夜の風景などが比較的有名だと思っているのだけど、この手の何の変哲もないイタリア風も凄くいい。
 おそらく、次世代を予告しているのは、前ロマン主義的な月夜で、この展示のイタリア風の風景画は、ローザだのクロードだのの模倣や焼き直しに過ぎない、ということで注目されないのかも知れない。
 というか、ヴェルネってクロードとローザを混ぜこぜに出来る凄い風景画家なのかも知れない。

 で、ローザでヴェルネにテンション上がったところに、ユベール・ロベールのユベール・ロベールな廃墟画。ヴェルネ&ロベールセットもピクチャレスクでいいなあ。
 古代エジプトと古代ギリシアと古代ローマが一緒くたになったようなざっくり古代な遺跡の風景。 もう、この古代観は本当に共感します。古代は歴史的には詳しくないけどなんか好きって人にとって、直感的な古代ってこんな感じだよね。
 一番向こうに聳えるエジプトぽい四角錐の建物、中程にパエストゥムのギリシア遺跡ぽいドーリス式の廃墟、トーガを着た古代人ぽい視察の人(観光客?)とスケッチしているトルコぽい人。
 エジプトぽいスフィンクスの口から噴水が出ていて、ローマぽい浅浮き彫りがその池に浸かっている。
 岩にロベールのサインとイギリス人へ贈るとの英語のメッセージがあるけど、そこのアルファベットはわざと古代のギリシア文字にしてある。例えば、RがΡ(ロー)、DがΔ(デルタ)など。
 何この雰囲気付けのために字だけは旧字体で書きましたみたいな乗り。英語なのに。ださ可愛い。
 もう、本当にロベールには共感する。ロベール展2やって欲しい!

 続く古典主義とロマン主義の時代。
 十八世紀から受け継いでロマン主義にも流行ったオリエントの異国趣味、ヴェルネやロベールの夢から覚めたイタリア、ローザの空想より荒々しく致命的な自然の猛威。
 それと同時に、非現実なほど理想的に滑らかな古典主義絵画。
 もちろん、女性を描くには柔らかくてうってつけで、話の内容は分からなかったけど、王様の前で服を脱いでいる女性の後ろ姿が彫刻みたいで素敵だったな。

 ミレーはいつものミレーで、コローはいつものコロー。
 仮面舞踏会のだらけた様子の絵。ピエロのだぶついた服で卓に座る人が可愛い。

 大目玉のルノワールの肖像画。
 いい絵だね…!ハッピーな絵。
 とてもハッピーな背景色がおしゃんてぃです。
 こんなピンクにしちゃったら、やはり暖色系で中間色の人肌を殺して台無しにしちゃうんじゃないかと思いきや。
 一体どこから背景色をすごい勢いのピンクにするという発想がわくのだろう。

 ドガのパステルとロートレック好きでした。ルソーのミューズはマツコデラックスにしか見えない。しかも目が怖い。清らかっぽい「詩人に霊感を与えるミューズ」なんてタイトルなのに、異様な植物の茂る背景にグロテスクな肉厚の赤い花。

 シャガールの哀切極まりない絵。故郷が戦争で破壊され、奥さんも亡くなってしまった頃に描かれたという。画面からは激しい喪失感が滲み出ています。
 緑色の夜空、歪んだ三日月の下で街はひっそりとして、しかし燃えるように破滅的な赤に縁取られています。
 空には、馬に導かれる白いドレスの青い顔をした花嫁と、その先にいくつも枝分かれした輝けるユダヤの燭台。

 最後のレジェの絵は戦争が終わって、新しく高層ビルを建てる男たち。天高く組まれた鉄骨の上で槌音を響かせる人間讃歌。
 全体は黄、赤、青、緑の原色で平面的に塗られていて、無機質で直線的な黒の鉄骨や人物の輪郭線が力強い。
 鉄の隙間から見える白い雲が高さと解放感を醸します。
 おそらくシャガールの街は壊されてしまったが、再びレジェは天に向かって建築する。
 壊すのも人間なら、創るのも人間。また新たに再生が始まります。

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10月3日拍手お返事

コウセイ様>
お久しぶりでございます!改め、只野さまとお呼びしたほうがいいでしょうか・・・。
イタリア旅行記、ものすごくのんびり進めております…(笑)もう全文は早々に書きあがっているのですが、画像を張り付けるのがなかなか大変で(笑)年内には終わらせたいところです。

 私はほぼローマ近郊だけ廻ったのですが、ローマはやはりちょっと歩くとすぐに遺跡だの派手な天井画のある聖堂だので、いちいち面白かったです。
 チヴィタ・バニョレージョ、本当にリアルにディズニーランドかドラクエか、といったところでした。猫がたくさんいたので、危うく猫ばっかり写真に収めてしまうところでした(笑)
 化け物公園も、本当いちいちへんてこなデザインばっかりで、思った以上に俄然よかったです。ちなみに、シーズンオフの冬に行ったので、ツアーで一緒に回った人たち以外は、ほかに一組だけしかお客さんいませんでした。カップルで…化け物公園に…デートしに来てました…。
 夜に行くのは、…ちょっと怖いですね。なんか変なものも見ちゃいそうです。

 新HP、お待ちしておりましたーーー!
 さっそくリンク張りなおしてあります。

 リアルの方でいろいろご事情があったとのことで、心配しておりましたが、ご復帰できるほどには落ち着かれたようで、本当によかったです><
 こちらは、相変わらず、ぐだぐだと学問の発展になんの寄与もしない語りをときどき繰り返しておりますが、よろしくおねがいいたしますねー^^

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なんせんす・さむしんぐ

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