横浜美術館プーシキン美術館展~フランス絵画の3百年~
プーサンからレジェまでどの絵も素晴らしく、
概要は、副題のまま、
最初はプーサンのバロック古典主義絵画ですが、続く3点ほどは、
シャルル・ル・ブラン<モリエールの肖像>
モリエールのいつものもふもふの鬘も素敵なのですが、
額縁の上部中央に装飾された組み文字が彫られていて、
グリムーのリコーダーを持つ少年。こういう絵が単純に好きだ。…図版入手ならず。雰囲気こんな感じです。
グリムーのグーグル画像検索
例えば、こういうオランダ絵画と同系統かしら。本来ならユトレヒトのカラヴァッジョ追随者が来るところを、ハールレムのモレナール。微妙に彼のファンなので、モレナールを見せたいだけです。
ヤン・ミーンス・モレナール<リコーダーを持つ少女>
ええと、モレナールはおいといて。
柔らかいレンブラント風の光。
羽飾りの鍔なし帽子を被る紅顔の少年、
そうでなくても、こういう単純な絵が単純に好きなのです。
蝋燭の灯りの下で手紙を読む女性。
クロード・ロランの理想的神話的風景画。
クロード・ロラン<マルシュアスのいる風景>
前景で小さく描かれているのは、木に縛られたマルシュアス。
技芸の神様アテネが作って捨てた笛(つまり最高の性能の笛)
かなり凄惨な神罰の背景で、それとは関係なしに、
謎の神殿の浮かぶ湖、崖の上にはドーム天井の古代の神殿、
絵の中に首を突っ込んで白くけぶる大気を胸一杯吸い込んで肺の奥
ブーシェのお師匠、ルモワーヌの素描の寓意。
霊感を受ける画家とモデルの寓意画。
子供にしてはいやに目付きの鋭い画家は、
背景は古代調で、
モデル役のプットーの被る布を除けようとするプットーと、
でも同時に画家とモデルという関係をちょっと思い出していたり。
ブーシェも大人の職業や牧歌的な恋愛を子供の姿でという絵を良く
次に続くのは、軽快な主題の室内画3点。
ランクレ。間男が奥様にプレゼントを贈るために、
マルグリット・ジェラール、フラゴナールの義理の妹。
プレリュード(前奏曲)と題された絵。
もちろん何の前奏かって、
とりあえず、楽器(特に猫脚クラヴサン)
さて、ブーシェ!
フランソワ・ブーシェ<ユピテルとカリスト>
この絵のために、何度プーシキンに行きたいと思ったことか!
数あるブーシェの中でも最高傑作の1つじゃないかと思います。
主題はユピテルとカリスト。
ディアナに従うニンフのカリストは、
…ただ単純に美女二人を絡ませたかったので、
神話の使い方、本当に上手いな…! この後、
まあ、内容はさておき。
やはりこの絵の神髄はその色彩、
やや白濁した明るい水色とミントグリーン、
その背景の森の人工的な青と緑の軽快な諧調は、
三角形の構図を取る人物、
三角構図の固さを崩そうと空の水色の中に戯れ舞う薔薇色のプット
この色の響き合いたるや…!
背景のニュアンスに富む寒色のグラデーション、
多分、このユピテルとカリスト(女性二人)
ブーシェの何が好きかって、
言ってしまえば、この物事に関する恬淡さが、
同時代の批評家ディドロは正しい! 逆の意味で。
「才能の浪費、時間の無駄。」「何という色彩、何という多様性、
この絵の前に真実なんて何であろう。
そして、絵とぴったりのロカイユ装飾の額縁がひたすら格好いい。
ロカイユ、
割と本気で複製画(ポストカードや大判印刷でなく)
カルル・ヴァン・ローのユノ。ヴァン・
アイボリーと鈍い水色の色彩がいいなぁ。←
落ち着いて大画面でどっしり構えているものの結構若々しく描いて
ヴェルネのサルヴァトル・ローザ風と銘打たれた風景画。
クロード・ジョゼフ・ヴェルネ<ローザ風の風景>
…ヴェルネ、よくやった! 思わず笑っちゃったじゃないの。
大岩のごろごろする険しい山や、滝川の急峻な流れ、
その荒々しいファンシーさが18世紀からロマン派に流行したので
売る気満々だなぁ…(笑)18世紀の受け狙い絵画本当に大好き!
ちょうど良い位置にある険しい岩のちょうど良い隙間から滝が流れ
崖の上には古代の廃墟と空気に霞む糸杉。この鉄板フレーズ、
まあ、
ただ、ローザの絵をカラーでそんなに見たことがないのだけど、
ヴェルネについていえば、ロマンチック&
おそらく、次世代を予告しているのは、前ロマン主義的な月夜で、
というか、ヴェルネってクロードとローザを混ぜこぜに出来る凄い風景画家なのかも知れない。
で、ローザでヴェルネにテンション上がったところに、ユベール・
古代エジプトと古代ギリシアと古代ローマが一緒くたになったよう
一番向こうに聳えるエジプトぽい四角錐の建物、
エジプトぽいスフィンクスの口から噴水が出ていて、
岩にロベールのサインとイギリス人へ贈るとの英語のメッセージが
何この雰囲気付けのために字だけは旧字体で書きましたみたいな乗
もう、本当にロベールには共感する。ロベール展2やって欲しい!
続く古典主義とロマン主義の時代。
十八世紀から受け継いでロマン主義にも流行ったオリエントの異国
それと同時に、非現実なほど理想的に滑らかな古典主義絵画。
もちろん、女性を描くには柔らかくてうってつけで、
ミレーはいつものミレーで、コローはいつものコロー。
仮面舞踏会のだらけた様子の絵。
大目玉のルノワールの肖像画。
いい絵だね…!ハッピーな絵。
とてもハッピーな背景色がおしゃんてぃです。
こんなピンクにしちゃったら、
一体どこから背景色をすごい勢いのピンクにするという発想がわく
ドガのパステルとロートレック好きでした。
シャガールの哀切極まりない絵。故郷が戦争で破壊され、
緑色の夜空、歪んだ三日月の下で街はひっそりとして、
空には、馬に導かれる白いドレスの青い顔をした花嫁と、
最後のレジェの絵は戦争が終わって、
全体は黄、赤、青、緑の原色で平面的に塗られていて、
鉄の隙間から見える白い雲が高さと解放感を醸します。
おそらくシャガールの街は壊されてしまったが、
壊すのも人間なら、創るのも人間。また新たに再生が始まります。