ローマの小説、アプレイユス著「黄金のろば」。
本名は「Metamorphoses(変身物語)」。
魔法で梟に変身しようとしたら、間違えて驢馬になって人間に使役されてしまう男の話。
プシュケとクピドの挿話だけが有名ですが、これ以外は大体下ねただったような(笑)プシュケの話も、魂が試練を経て真実の愛へ至る、というより最凶の姑ウェヌスがプシュケをいじめる話のような。
felix vero ego, quae in ipso aetatis meae flore vocabor avia,……
「本当にあたしって幸せよね、花も盛りのこの年齢でおばあちゃんなんて呼ばれるようになるんだから、……」
散々に身重のプシュケを痛め付けたあとの台詞。ウェヌス様はご自分の年齢を上記のように思っているらしい。
気に入ったので、ここだけ原文調べてみました(笑)(でも完全に文章理解してないので、雰囲気こんなこと言ってるのかなって程度で……(笑))しかもこの後もまだまだ虐めます。
プシュケとクピドというより、ウェヌスのヒステリックかつ、ねちっこい怒りが壮絶。だけどすごく生き生きしてて、このウェヌス様大好き(笑)
後世の人はこの話からよく哲学的な「魂と愛」の美しい寓意をよみとったなぁ…(笑)それとも別にソースがあるのかな。
「黄金のろば」、下ねたも暴力も多いですが、始終とっても根明です。
ラバを産ませようと馬の群れに放される主人公が結構乗り気だったり。浮気な奥様と間男の所にお約束通り夫が早く帰宅、そして寝室から叩き出されるのは奥様の方とか。ろばの主人公に人間の貴婦人とのまさかの禁断のロマンスとか。
ローマン・ギャグ?満載で笑える。
人間に戻る条件は薔薇の花を食べるという簡単なこと。が、「意地の悪いフォルトゥーナ」に見放されるどころか、積極的に運が悪いという大冒険(笑)
ろばになったその日に強盗に入られ、盗品の荷運びをさせられ、山賊のアジトへ連れていかれてしまう。
で、荒くれの山賊団を逃げ出し、その後も、ホモで怪しい宗教団体、性悪の人、農夫、道楽な都会人など、次々と人間の財産となりながら、ろばの立場と耳を生かして色々な人間模様を見せていきます。
さて、絵に関していえば。重要なことは、この絵を描くにあたって、なんら考証的なことはしなかったということです。
ベースは中世の福音書記者像で、そこから空想だけで「それっぽい感じ」をでっち上げ。
あと、概ねアナログ描きですが、あまりに適当に描きすぎたため、緑の柱の右側のやつを大変に描き損じてしまい、諦めてCGによるコピペを施しました。
天使さんが寄ってたかってヴィオールで合奏してくれたら、まさにパラダイスだなーと思って。
イラストの花形はやはり人間の絵なので、人間を描けなきゃいかんなぁと思いまして、しかし人間描くの苦手でしんどいので(笑)一番やる気の出るモチーフで練習しました。
楽器と羽とひらひらした服が無いと、人間やる気出ない。
よく見ると、何となく顔立ちがばらばらなのは、もちろん安定して描くなんて実力がないからです。こんな人を描きたいなーって思っても、コントロールして描けないの(笑)ああ、色々と描きたくても描けなかったものの方が多い。
以下、所感など。
一番、すんなり描けたかなって思ってる人。ヴィオールの構え方も、この角度が一番好きかも。
北方風というか中世風というか、ざっくりそんなイメージ。ちょっと細長い感じで、素朴な顔立ちが少し気に入ってます。
しっくりこない。初めから終わりまで、顔から翼から楽器から何から何まで、嵌らなかった人(笑)
顔は一番気に入っているかも。でもちょっとバランスが悪いかなー。
生意気な感じの顔になっちゃった(笑)
バランスは悪いんだけど、雰囲気が好きかも。というか、この角度のヴィオール描くのしんどかった。
おまけ。
天使がチェンバロを弾くことは滅多にない。というか見たことない。背中に大量のチェンバロの爪の材料を背負っているというのに。
何だこれー変な絵ー。
天使って、ハープやヴァイオリンやヴィオールやリュートは弾くけどチェンバロ弾かないな、試しに弾いてみようか、という動機。
色々な大人の事情でしょうか。機動性に欠けるとか、ふわふわした雲の上に乗せるには重すぎるとか、この楽器と一緒に空飛んだりしないでしょ、とか。全て、構図が取りにくいということに集約される気がします。
楽器全体を入れるにはあと2.5倍横長でないとな…。
うん、変な落書きしてすみません。
最近バロメッツが妙にツボに入ってしまったので、衝動的にバロメッツ的な何かを描いてみました。
何でしょう、これ。
描いた本人も描かれたものの意味が全然分からないのですが、「こんな感じっぽい雰囲気の何か」を描きたかったのです。
で、結局バロメッツかどうかも怪しくなっているとか。まあ結局、読み取るべき意味が無いという……。
雰囲気づけの為だけのゴシック風の文字列は、羊繋がりでパエドルスの寓話「Lupus et Agnus 狼と羊」です。
このゴシック風のブラックレターは、むろん読まれることを意図していませんが、内容が気になって気持ち悪いって方のために、下になんちゃって訳を付けておきます。
翻訳というより辞書と文法書を頼りに文章を眺めていてこんな意味かなと読み取った内容、というだけの代物ですので悪しからず(笑)
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ある同じ川に、 喉の渇きに駆られて狼と羊がやって来た。
上流に立っていたのは狼で、そしてずっと下流に羊がいた。
やがて、節操のない喉を持っていたので、この乱暴な略奪者たる狼がいさかいの口実を述べ始めた。
「一体なぜ」
と、狼は言った。
「俺の飲み水を濁らすのだ?」
これに対し、綿毛の生き物は怖がりながらも言った。
「伺いますが、貴方の訴えるようなことが、なぜ私に出来るでしょうか、狼様。貴方から私の方へと飲み水は流れているのですよ。」
真実の力で反駁されて、狼は断言した。
「この6ヶ月前にも、お前はそんな憎まれ口を叩いたな。」
羊は答えた。
「確かなことですが、私は生まれていませんでした。」
「神かけて言うが、お前の父親も」
狼は言った。
「俺に憎まれ口を叩いたものよ。」
そしてこのようにして、襲いかかると不当に引き裂いて殺してしまった。
あの狼みたく、偽の理由で無実の者を圧し潰す人々のために、この寓話は書かれたのである。