西洋美術館の常設の新規収蔵作品が、死ぬほど気に入った。
エヴァリスト・バスケニス<楽器のある静物>
楽器のある静物。←とりあえず楽器萌え
見てよ、この左側のリュート!
埃をかぶったのを、机の上に運んだ時についた指の跡まで描写してる…!
ああ、私の携帯カメラの画質の悪さとカメラスキルのなさよ……この写真では分かりにくいですが…(もうみんな本物見て…!(笑))
先のモランディ(1890-1964)の展覧会に行ったとき、モチーフに積もる埃も静物の大切な要素なのだ、と解説にあった。
ものに積もった埃は、色彩の微妙な変化をもたらすだけでなく、そのものに毎日少しずつ埃が積もるだけ流れた時間をも表す、のだそう。で、格好いいじゃないか、と感心してきたばかりです。
つまり、バロック時代のこの埃をかぶったリュートの絵も、この埃が積もるまでの時の流れが描かれている、と言うことが出来るのです!
(画家にモランディと同じ意図があったか定かでないが…!)
リュートの上の埃。
この埃が積もる間、このリュートは誰に弾かれることもなく、前面を下にして置きっぱなしにされていた。
本来、楽器は人間が触れて音を出すもの。埃が積もることで、人間の不在を感じられます。
これには、ある建築物が、人間が使わなくなったために廃墟と化す、廃墟の美学に通じる詩情がある。
時の流れと、人との関係の希薄さ。
時間ばかりではなく、楽器と人間の関係性まで語りだす埃。
裏返しの楽器。消え去った音楽の時間。控え目に漂うヴァニタスの気配。
そればかりか、埃にくっきり付いた手形は、放置されたリュートを画家が手に持って台に運ぶ、という動作まで物語っている。
埃すごい! そして、埃を完璧に描写するバスケニスの腕前。バスケニス大好きになった。
バスケニス以外にも埃を描く人っているのかな? これだけ面白いモチーフなんだから、他にも描いてる人がいそう。
……他にもこの静物画には要素いっぱいあるのに、埃だけ語りすぎた(笑)
埃の積もったリュートは、この画家のお気に入りのモチーフだったみたい。
もしかしたら、画家はこの埃を「育て」ていて、誰かが掃除してくれようとしたらば必死の形相で止めに入って、誰かが掃除してくれてしまったならば殆ど泣きそうになって、この世の無常と存在の儚さを噛み締めたのかも知れない。
というのは妄想です。