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○なんせんす・さむしんぐ○

美術や音楽の感想とか、動物中心のイラストのブログ。

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DNPの体感する地球儀、天球儀展

DNPのフランス国立図書館、地球儀・天球儀展へ、最終日に滑り込みで行ってきました。
 超楽しかった。

 博物的資料たる実物は、西洋で地球儀が作られた始めた16世紀のものから、19世紀のものが5点。
 たった5点だけど、その他のデジタルを駆使した展示が、すごく面白かった。(無駄にお金かけてる、とも言える←誉め言葉)

 資料の展示ケースの前には、モニターが設置されていて、3Dデータ化された地球儀や天球儀を、指先でくるくる回して自由に動かしたり、注目ポイントにタッチすると細かい説明出たりして、情報量が多い。

 年代毎に地球儀を見ると、伝聞だけで曖昧だった地図が、大航海時代の経験や貿易の発展で、世界全ての正確性がだんだん増していく。

 併設のシアターでは、日本の描かれ方の変遷を特集してました。
 初めは、マルコ・ポーロの「黄金の国ジパング」的な言説を鵜呑み(笑)にして、ほとんど楽園のような、円形の島として地球儀上に表れた日本。
 きちんと本州四国九州が書かれ始めるのは、南蛮貿易で伝説の島が現実の商売相手に変わってから。(蝦夷は後の方まで不明瞭)
 鎖国してからも、意外と調査船が日本の周りを航行してたりして、そうした冒険が世界地図の正確さに寄与したそうです。

 一個の地球儀が出来るまでに、一人の人間だけでは足りない膨大な知識の蓄積と、球体への再構築が必要で、地球儀本当ロマン。

 さて、地球儀より天球儀が好きです。
 展示は啓蒙時代の〈ヴォーゴンディの天球儀〉。
 ディディエ・ロベール・ド・ヴォーゴンディという大層な名前の地球儀制作家が人気だったそうです。

 当時最新の、同時代の天文学者ラカイユが観測、設定した南天の地味~な(笑)星座も書かれている。

 あと個人的に好きな、今は亡きケルベルス座がまだ存在したのに感動。
 描かれ方は犬というより蛇で、ヘラクレス座に蛇の胴体を捕まれて描かれていました。

 それとたまたま目についた祭壇座。
 もちろん沢山のあらゆる祭壇座の図像を見尽くした訳ではないですが、ぜんぜん祭壇に見えない。
 煉瓦を四角く積んだだけで、キャンプ場にあるかまどに近い(笑)一体どういうつもりだろうと。やはり答えは無いし、大した理由でもないのかもしれないけど。
 考古学ブームの啓蒙の時代だし、考古学的にありそうな現実的なイメージにしたのかなぁ。とか仮説。
 そういえば、ギリシアやローマの生け贄を捧げる祭壇って、実際どんな感じなんだろう。今後、壺絵とかなんとなく注意してみようかな。

 ああ、天球儀本当に欲しい。手のひらサイズさえあれば…。
 最悪、星座図をダウンロード、印刷して、ちょうどいい大きさの球体に張り付けるだけで、結構それっぽいもの出来そうだけど…。やるしかないのか!?

 そんな天球儀の作り方メモ。
 紙粘土や石膏で中空の球体を用意
表面は滑らかにしておく。中は木の梁を渡して補強。 
 舟形図に作図。球体にするため、笹の葉っぱのような紡錘形の枠を12枚横に並べ、そこに星座図を書きます。ものによっては、北極星などの北と南の天極を描く用の丸い枠も用意。
 天文学者が赤道と黄道を引き、星を配置、版画家がイラスト担当。……分業だったのね…!
 ちなみに、地球儀の場合、作図はは、地理学者と数学者の仕事になるそうです。
 銅板に線刻して印刷したら、舟形図を切り離し、緯度経度がずれないように球体に張り付け。
 着彩後、ニス塗り。
 地平環と子午環を取り付け、指物師による台座に設置。

 以上のことを綺麗な冊子と動画(日英仏3か国語)で説明してくれました。手元の冊子をめくると、スクリーンに写し出された動画も「次の説明」に切り替わるのでした。

 展示された実物は5点だけなのだけど、データ化された地球儀・天球儀は他に15点くらいはあって、やはり細かい解説とともに、モニター越しに回すことが出来ます。

 どうやら、展示の前期には、フェルメールの絵に描かれた天球儀とその対の地球儀がやってきていたようだ。

フェルメール<天文学者>
 地球儀と天球儀が、対になっていることに意味があるらしい。
 あっ、そういえばフェルメールの地理学者と天文学者でもそんな解説あったなぁ。
 人間の住む地球と、地球を取り囲む天球。世界の全て。 
 ともあれ、後期は天球儀のデータのみです。

 こうしたフランス国立図書館の地球儀、天球儀を、大日本印刷が(←ここ大事な展示の主張)3Dデジタル化して、フランスの電子図書館gallicaガリカで、つまりインターネットでどこでも誰でも閲覧可能だそうです。
 ついに夢の天球儀がご家庭で
バーチャルに…!
 古い地球儀や天球儀を、誰でも気軽にぺたぺたぐるぐるして劣化させてしまう訳にもいかないので、データ化して皆がバーチャルで眺められるって、本当にいい事だと思う!

 もっとも凝った展示物は、立体映像の流れるゴーグルをかけて、これもバーチャルに天球儀の中に入る、というもの。
 天球儀の中心、すなわち地球の位置に浮かんで、内側から眺める設定。
 天動説世界における宇宙旅行の趣で(それにしては狭いか(笑))、ゴーグルを着けたまま上を向くと乙女座や牡牛座などお馴染みの星座が、下を向くと南天の星々が足の下に広がります。
 これ、天球儀を作った当時の人たちに見せたら大熱狂だろうな…(笑)大ウケしそう。

 さて、この展示の一番の主張。多分。
 大日本印刷は、フランス国立図書館と手を組み、そこの歴史的地球儀と天球儀コレクションを高精細3Dデータ化します! フランス国立図書館は、そのデータをネット公開します! 文化振興頑張ってます! どうだDNPすごいだろ。
 いや、素直に大日本印刷すごいと思いました。好感度上がった。

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