 
正式名称「フランスの風景 樹をめぐる物語-コローからモネ、ピサロ、マティスまで-」
 時に、風景というよりは「その樹」を描いた、という性質の風景画がある。
 そんな木を主役にした絵を集めたという展覧会だと思ったのだけど、違った。
 普通に、18世紀末からバルビゾン派を経て、印象派→後期印象派までのフランス風景画を並べた展示でした。
 全体からは「樹をめぐる物語」はあまり感じなかったのよね。。。
 その絵の中で樹がどんな役割――象徴的だったり、構図上の問題だったり――を果たしているのか、その樹の描き方は、それ以前、あるいは同時代とどう違ってどう同じなのか、樹を描くことの意味とは、とか、なんかそういう解釈を聴けるものと思ってたんだけど。
 そういう踏み込んだ内容ではありませんでした。
 ううーん、展示のタイトルと中身にギャップあり、と感じました。
 自分で考えろってことですね・・・。 あるいは、図録に丁寧に描かれていたのかも。
 
 そういう絵も無いことはなかったけど。
 一番好きだったのは水彩画。
 バルビゾン派の中では、生前もっとも成功したといわれているらしいフランソワ・ルイ・フランセという画家の絵。
 古式ゆかしい?イタリアの風景。
 雪の積もるボルゲーゼ宮を入り口の階段横から眺めた情景。古代風の女性彫像が立ち、古代の神殿ぽい柱の折れたやつが草の中に転がっている。
 雪が積もって、明るい薄桃と灰青色と、ハイライトの柔らかな白が基調となっている。
 イタリアいいわ~ボルゲーゼと古代彫刻素敵だわ~。軽やかな色使い、癒されるわー。
 ・・・こういうキャッチーな絵が個人的に好みなだけだー。
 
 シニャックの、絹にテンペラ、という珍しい素材の作品。
 油彩よりも非常に軽やか。絹とテンペラの素材としての軽やかさたるや。
 画風はいつものシニャックといった感じですが、白を基調にした画面は、色がとても綺麗で、樹のあたりの光の具合が素敵。
 そういえば、シニャックの水彩画も色の組合せが綺麗なのよね。
 それにしても、絹にテンペラとは。
 絵は扇形になっていて、本当に扇にするつもりだったのか、ただのそういうフォーマットなのかしら。
 ロマン派やバルビゾン派のご先祖としての、18世紀末の風景素描が見れたのは良かった。個人的な趣味で(笑)
 18世紀では、その辺の樹を描いただけのただの現実の風景は、創造的じゃない、詩的じゃないと評価されて、まだ風景画の地位は低かったのでした。
 
 だからといって現実の風景を描くことが無価値だという訳ではなく、もっと上位の神話画を説得力をもって生き生きと描くには、先人の絵を模写するのではなく、現実の自然を模倣することから始めるべきだ、と言われます。
 そこで、戸外での、外光による風景画(の習作)の制作が盛んに行われるようになり、そうしたアトリエの外の自然を自然のままに描こうという姿勢が、後のバルビゾン派や印象派などの土壌の1つとなっていった。
 というようなことが、お土産屋さんで売られている「ローマが風景になったとき」っていう素晴らしい本に書かれているから、みんな買って読めばいいよ←宣伝
 だから、展示は18世紀の素描から始まってるわけですね。
 と、脱線したまま、戻る気もなく筆を置きます(笑)素敵なオチが思い付かないよ!