ずっと携帯で打ちっぱなしで(まろりーは美術館記事の多くをスマートじゃない携帯で自分のパソコンへメールする事によって作成する。)すっかり時期を逸してしまった、でも記事。
Bunkamuraのレオナルドと美の理想展と、三菱一号館のKATAGAMI Style展を梯子。
その日は最初はレオナルドだけ行く予定だったけど、日曜でも存外に空いてて、時間が微妙にあったので、食後のデザートのつもりで三菱一号館に行ったら、それも結構なメインディッシュであった。というか、レオ様より混んでてそれも意外だった。入館にいくらか並びました。
はて、レオ様の方を簡単に感想。
レオナルドの素描を目玉にしている展示。全体としては、レオナルドまでの理想美に始まり、レオナルドの絵画論の抜粋から美の理想に迫り、それが弟子に受け継がれ後世にどう影響したか、という粗筋。
箇条書きに。
最初にデューラーでまずテンション上がる。
アルブレヒト・デューラー<柳の枝の飾り文様>
確か、レオナルド、イタリアの何処かの建物で組紐模様の天井画を描いていたよね。うろ覚えだけど。
とにかく、デューラーが木版でこの図案を彫り出したその技巧が怖くて楽しい。本当、ちょっとでも手元が狂ったら…組紐切れちゃう、その危うさが堪りません。
ところどころに挿入されるレオナルド・ダ・ヴィンチのツイートに括弧笑い。
レオナルドのドレーパリーの素描が美しい!
レオナルド・ダ・ヴィンチ<衣紋の習作>
衣服の下に肉体があるように描かねばならない、というレオ様のツイート。首が描かれていなくとも紛れもなく、「衣を纏った人」が描かれている。小さく、普通の意味での完成品ではないけど雄弁です。
実を言えば、まろりー自身は、常々衣紋の装飾性のもとに人体を犠牲にして大いに結構、という立場なんだけど、その装飾性から見ても、文句無しの衣紋のデザイン。 それで的確過ぎる陰影。この素描欲しいなーと思ったらポストカードになってたから、コピー最高。
慎ましげに目を伏せ、顔をやや傾ける女性、というのがレオナルドの好みのタイプらしく、まさにそのままな「ほつれ髪の女」。
レオナルド<ほつれ髪の女>
このような、レオナルドの特徴的な女性像は弟子や追随者に受け継がれました。
レオナルド派ではあるけれど、色気の少ないレオナルドよりも女性に興味があるらしいジャンピエトリーノさんの聖女像が面白い。
美術館は「官能的な女性像を得意とした」と説明を付けていたけれど、絵からは…常識の範囲内での女好きが窺われます。というか、宗教画というより閨房画に見える。
一枚目の聖女は胸もあらわにマグダラのマリアかルクレツィアを描いたものみたい。美少女といった趣きですが、二枚目のマグダラのマリアはもうちょっと歳かさが増している。しかし「官能的さ」は同等で、若いのも年増もどっちもストライクらしい(笑)
と、それぞれの好みに変奏しつつ次世代に受け継がれるレオナルド派。でもレオナルドといえばやはりモナ・リザなのは昔から変わらないようです。
で、圧巻はそのモナ・リザ祭り。本物のモナリザはもちろんないけど、これだけのモナリザが一堂に会するだけでも面白い。さながらそっくりさんコンテスト。有名人は違うや!
レオナルドと共にフランスへ渡ったモナリザ。それは大評判になり、多くの模写が行われた。
顔が全然違っていたり、なかなか似ていてても本物に特徴的なスフマート(薄塗りを重ねるぼかし)を使ってなかったり。
中に一枚、やたらきらきらしたニセリザがいて、似てない。
作者不詳<アイルワースのモナ・リザ>
でも、現代人からみて本物よりずっと美人(笑)完成度が高く美人だしこれも本物のダビンチかも!という主張さえあるとか。
この人がMVPだとは思う(笑)ジャンピエトリーノも面白かったけど、調子に乗り過ぎだし(←決してそういう訳では)
しかし一番感動したモナリザは、十九世紀に版画で写されたもの。顔もそっくり、白黒の版画で困難なぼかしも再現性が高く、技法は「ビュラン(微細な彫刻刀)」と書いてあるけど、やたら細かいので硬い鉄板にエングレーヴィングだろうか…。とにかく人力とは思えない彫り。きっと、刷ってもすぐに摩耗して量産はできまい。
なんと、モナ・リザの彫刻版まで。普段は決して見えない後ろ姿を見られます。
版画の写しでは、今は(始めから?)黒ずんでいてよく見えない左腕の下の肘掛も描いてある。あの絵の神秘性というものを深めるのは、そういう具体的な小道具が見えにくいところにもあるなあと思いました(小学生みたいな言い方…)
十九世紀のロマン主義的歴史画が笑える。
モナリザを描くレオナルドとそこにやってくるラファエロ。
似たような版画しか図版なかった(笑)いや、同じ絵の版画化だろうか?(←あんまり覚えてないらしい)
それにしたって、ドリームすぎだろう。
普通のギリシア神話やローマの歴史に飽き足らなくなって、中世以降の歴史も題材にしだすロマン。まさに「歴史大河浪漫」とはこのことで、モナリザを描くダビンチの姿が描かれています。
モデルのリザ・ジョコンダを椅子に座らせ、周りには彼女を退屈させないために楽師たちやお女中か賑やかしている。この絵の元ねたになったヴァザーリの魅力的な記述も捏造らしいですが、極めて大真面目に時代考証と空想を巡らして、いかにも本当にあったことのように描かれています。十九世紀には事実と信じられていたかは知らないけれど。
見たこともないダビンチがそっくり!(笑)まあ、現代のレオナルド・ダ・ヴィンチ本人の視覚イメージにこうした絵が寄与していることは疑いないから当たり前なんだけど。白い髭に、深い青の長衣を来て、同色のジャムの蓋に被せてあるような帽子を被っている。まさにダビンチ。
モナリザに人気があるように、この画題にも人気があったようで、作者の違う二枚の「モナリザを描くレオナルド」が並んでいる。
最後はレオナルドの死。 やっぱり、ロマンチックな歴史画の版画化で。
ジャン=オーギュスト・ドミニク・アングル<レオナルド・ダ・ヴィンチの死>
こちらは元の油彩画。
フランソワ一世とか、肖像画にそっくりに描いてあって、とても説得力はある。
以前、何かのテレビ番組でレオナルド特集をしていたとき、「レオナルドはフランスで亡くなりました。」というナレーションの背景にこの絵の原画が出てきてひやっとしたが、まあやっぱり伝説の一場面の絵として面白いのよね。冷静に考えて、ありえなさそうなシーンだけど。いえ、これも歴史ドリームなので。
十九世紀の面白いところの一つは自信たっぷりに捏造するところです。今もある意味ではそうか(笑)
ついでに、三菱一号館のカタガミ展にも触れると。
時は十九世紀末、ジャポニズムといえば一般には平面的な浮世絵の影響が言われるけど、日本の染め物に使う「型紙」も、その大胆で斬新なデザインがヨーロッパ人の目に留まり、海を渡って当時のジャポニズムを大いに刺激した、というお話。型紙は日本にとっては単なる消耗品で、その「芸術的」な価値は見落とされがちだったけど、そこに改めて焦点を当ててみよう、という試みです。どうやらどこかヨーロッパの方では型紙の影響を問う研究は為されているらしい。それを下敷きにした展示内容だそうです。
さて、日本で作られた型紙と、ヨーロッパ各国の影響の見られる作品が並べてあって、その類似と差異を見比べられます。
細密な型紙職人の精確無比の手仕事の技術力を存分に堪能しました。映像で型紙職人による作成過程を見ることが出来るのですが、余りの仕事ぶりに、誰からとも知らず感嘆の悲鳴が上がる程でした。
何かの一冊のアールヌーヴォーからデコ期のジャポニズムな美術論文を読む様で、一方で見るだけでも大いに楽しめる展示。
そして、型紙は現代の本物がお土産屋さんで売られていたり(笑)額に入れて飾っても十分格好いい。
6月23日拍手お返事
三郎丸氏>
ありがとう~。三郎丸氏のお陰だよ。じつは、前々より、こっそりやっていたのです。まあ、殆ど連結はしてないし、十分使いこなしてはいないんだけどね。やっぱり何だかんだ言って、やりたい放題出来るブログがメインです。