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○なんせんす・さむしんぐ○

美術や音楽の感想とか、動物中心のイラストのブログ。

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マイセン展の感動の一部、というより足の絵

 時は、数年前。まろりーがパリに旅行に行ったときのことに遡ります。
 その時見に行ったカルナヴァレ博物館で、ふと目にして大いに感動し、以後全く忘れることの出来ない絵に出会いました。

asi.jpg

 脳内通称<足の絵>。写真はまろりー本人で、現地でとってきたもの。
 これ程、感動した絵はなかなか無い。色や筆致は18世紀風。本当に18世紀のものかは私には判断つかないけど、とにかく18世紀の香り高い小品。
 これの何に感動したかと言うと、足と白と黄色の布、つまり大切なものは何も描かれていないのに、一瞬で「何の絵」か分かるということ。これほどの少ない要素で絵はここまで語るものかと、画家の手腕と着眼点に鳥肌が立った。
 そう、着眼点。そもそも、片方の足だけを途中で切り取って絵にする、というその発想が、日本ならまだしも18世紀ヨーロッパのセンスを超えていると思う。でも絵は最初からこのような絵を描こうと意図されたかのように、本当にこれで完結していて、しかし、この光の感じや軽快な筆跡は18世紀独特のものだから、本当に18世紀のものか、と混乱してしまう。むしろ、谷崎純一郎の世界です。
 一体、いつ誰が何のために描いたのか、もともと大きな絵の一部を後で切り取ったものなのか、足だけだったのか、そんな説明書きは一切なく、ただ壁の間を埋めるように飾られていた足の絵。
 足の絵である以外は何も分からないけど、とにかく目に沁みついて離れない足。

 タイトルにあるように、マイセン磁器展で、その謎の一旦が、ほんのちょっと分かったのです。
 展示の中ほどで、陶板画が飾られていました。白い磁器をカンバスに見立てて、名画の複製を描いた壁に飾る装飾板。下図はその原画。

boucher.jpg
フランソワ・ブーシェ<金髪のオダリスク>

 あの足の絵の原画は18世紀の画壇に君臨したブーシェの有名な絵だったか…!なんで気付かなかったんだろう。足の部分がまったく一緒ではないですか。色も、構図も。
 なぜこの「部分だけ」の模写が額に飾ってあるのか、それて誰が模写したのか、やっぱりそれは分からないけれど、足の主だけは分かりました。
 どうせウェヌスかオダリスクかと思っていたけど、案の定オダリスクでした。トルコの王様スルタンのハーレムの女性という設定。で、その実、ルイ15世ご寵愛のご婦人がモデルなのだとか。
 それにしても、足だけ取り出して見せることで、とんでもない含蓄が生まれると思いませんか。しかも、とても上品なほのめかしで。
 原画のオダリスクそのものは、足を開いてソファの上にうつ伏せに横たわる女性という全くほのめかさない(笑)ものですけれども。まあ、それでも、なのかそれ故なのか、品は失わず何だか健全で朗らかです。
 いえいえ、名画とは、部分だけ取り出しても、名画なのですね。本当、ブーシェを心から尊敬した!
 それと、この完結されたオダリスクから足だけ取り出して、それを額装して壁に描けた人間に心から敬服します。「本物」でも「偽物」でも18世紀でも現代でも。

 さて、ところは六本木、サントリー美術館にてマイセン磁器展行ってきました訳です。この一番の感想が、最も個人的なこれ。
 追って詳細な感想を言おうかと思うけど、今回これだけは言わせて欲しかった!

 デューラーを始めとする版画もそうですが、そもそも洋の東西を問わず、陶磁器も好きなのです。といっても、まあせいぜい、柿右衛門と鍋島とマイセン初めの西洋磁器が興味の中心なのだけど。これらは、密接に関連していて、まろりーにとっては大きな別の無い、一連のものです。
 18世紀に、マイセンなる西洋磁器をヨーロッパで初めて作らせたドイツの王様アウグスト強王は、日本や中国の磁器の大ファンだった為、ついには自分の国で作らせてしまったというお話。マイセン窯による、柿右衛門写しなんか、結構沢山あります。そのために錬金術師を軟禁して宮廷科学者と共に開発に当たらせたというのだから、この辺もちょっとドラマチック(笑)
 いや、もしまろりーが18世紀のお金持ちに生まれていたら、本当日本やマイセンの磁器コレクションしたい!(あとは、種々の版画(笑))アウグスト強王の懐を潤してしまいそうだ。

 展示に点数付けるなら、総合点は85点。-15点分は、18世紀の初期のデザインではあるものの、20世紀初頭の復刻版の展示が多かったから。18世紀当時のものが見たいまろりーとしては、その辺の、オリジナルではない差異を自分で計算する手間の分(笑)
 やはり描き手が現代人だから、隣に置かれたほぼオリジナル時代の絵付けと比べると、絵柄は同じで優雅ではあるけど、影の付け方、描き方が現代風にスタイリッシュで、やはりあくまでも現代もの。
 とか、若干無駄に辛口なこと言いつつ、5時間かけて館内見てたのです。面白すぎて5時間も見続けてたなんて気付かなかった…!
 と、今日はここまでにしましょう。デューラーも完結してないというのにね。

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