トーマス・ジョーンズ(1742-1803)が大好きだ!本当、いい。ので、ひたすらトマス・ジョーンズの絵列挙。
<ナポリの壁>
当時、イギリスの皆々こぞって出掛けた夢の国イタリア。
イギリスは産業革命で国力が増したものの、文化的な後進国との自覚があり、イタリアという伝統文化を吸収しようという名目で、大旅行を企てたのでした。
画家としても、そんな旅行の思い出を絵画化する需要があったり、イタリア帰りは芸術家としての箔もつくし、やっぱり美の国イタリアを目指します。
トーマス・ジョーンズもそんな中の一人。どうも、後年は画家としての活動はあまりしなかったようですが、とにかくイタリアの風景スケッチが、当時としては独特のセンスすぎて、面白いの一言。
この写実主義以降っぽい超近代的な絵で、実は18世紀後半、啓蒙の時代の人。
代表作が上に上げた<ナポリの壁>
本当、壁としかいいようのない絵なのに、この素晴らしさはなんだ。ちなみに、ポストカードくらいの大きさしかないらしいです。
そもそも、こうやって「壁を描こう」なんてセンスがあっていいのでしょうか。壁に向かって、筆を走らせる不審な画家。これは妄想だけど、地元っ子ナポリの人たちには謎の行動だったに違いない(笑)
<ナポリの家>
素直にナポリの家。この時代、誰が普通の民家を絵に描こうだなんて思ったことだろう。本当大好き!
<ナポリの家>
やっぱり洗濯物が気になるの?(笑)
<ポジリッポの洞窟>
だたの家だけでなく、観光名所も押さえます。
<ナポリの家>
でもやっぱりナポリの家。
<風景>
なんでもない丘と雲。雲が描きたかったようです。
<ナポリ風景、崖の上の建物>
手前の垣根が利いてる。
<サン・マルティーノ修道院とサン・テルモ城の眺望>
手前の赤い屋根と丘の対比がヤバい!
…ただし、これらはすべて、私的なイタリア旅行の思い出メモとして残したスケッチ。つまりは、世に問うような気合いの入ったものではない。
タイトルも本人がつけたようなものではないけど、<ナポリの壁>といい、ナポリの壁としか言いようがない。
実は、この手の素描で現代に再評価されている、という人だけど、本気の(つまり普通の)絵っていうのはちっとも有名でない。
しかしそれにしても写真のような構図の切り取り方。本当にこんなにばっちり構図の決まった景色なんてあるのでしょうか。
気軽に写真を撮るなんて時代じゃないから、なるべく現実そのままを描こうと思ってたのでしょうか。
でも、冒頭あたり「写実主義」なんて言ったけど、トーマス・ジョーンズ自身には、そんな立派な主義はありません。
その主義のない、恬淡さ。
いかにも、18世紀らしいこだわりのなさ、清々しさ。
トマス・ジョーンズを愛する所以です。