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○なんせんす・さむしんぐ○

美術や音楽の感想とか、動物中心のイラストのブログ。

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アーベルの犬とゲインズバラ

まろりー不在の肖像
 ↑現在のまろりーを端的に表しすぎている我が枕辺。まろりー不在の肖像画。

・「ゲインズバラの犬」(「ゲインズバラと犬」という展覧会のカタログ兼ゲインズバラの犬についての小論文)
・ロンゴス「ダフニスとクロエー」(牧歌的恋愛小説。元はギリシア語で描かれていた通俗小説。非常に甘口)
・マラン・マレ「2つのヴィオルとテオルボのための組曲」

 しかし、もうゲインズバラ最高です。
 18世紀、イギリスの人気肖像画家ゲインズバラ。肖像画家として顧客の多いロンドンに居る必要があったけど、本当は風景画を描いていたかった田園を愛するゲインズバラ。肖像画を描くのが好きじゃなくって、お客さんは財布にしか見えないゲインズバラ。肖像画のお客さんを「あの顔ども」と呼ぶゲインズバラ。肖像画の背景で大好きな風景を描いて露骨に鬱憤を晴らしていたゲインズバラ。というか、適当な客と気に入った客の描き方も露骨に違うゲインズバラ。田舎に引っ込んで大自然の中で愛用のヴィオラ・ダ・ガンバを弾きたいと願ってやまないゲインズバラ。わんこが大好きなゲインズバラ。一方でジョシュア・レノルズ実力は認めるけど正直うざいとか思っていたゲインズバラ。素敵な人です。  
 当時、風景画は需要の多いジャンルではなく、風景だけでは生活できなかったので、「人物は金のため、背景は自分のため」と空想的で素敵な景色の中にいる肖像画を数多く描きました。
 着飾った人たちの肖像、素敵なお犬様、背景の田園、センチメンタルな農民、まろりーの欲求をいろいろと叶えてくれてかなり理想的☆
 で、最近勢い余って、ゲインズバラの図版を海外取り寄せしてみたりした訳です。


 そして冒頭の「ゲインズバラの犬」ってこの本が大当たり!
 2006年、イギリス、サフォーク州はサドバリーにあるゲインズバラ・ハウスという美術館の「ゲインズバラの犬展」に際しての小冊子らしいのですが。
 ゲインズバラの犬展って…!なんていうマニアック展示(笑)ゲインズバラ展だけだって十分にマニアックだのに、さらに犬限定。
 しかし、この図版を見ていると・・・本当に犬好きです、ゲインズバラ。
 例えば、バクルー公爵の肖像。
バクルー公爵の肖像
 ノリノリでポーズを取る公爵とノリノリで犬を描く画家。画家もモデルもわんこ大好き(笑)っていうか、こんな俺と愛犬との記念撮影!みたいな肖像画でいいのでしょうか、公爵…。

 さて、以前にも紹介したこの絵。
36648217_2539207356.jpg
 ガンバ奏者、アーベルの肖像。
 度を越した音楽好きのゲインズバラの唯一無二の?親友にして、ヴィオラ・ダ・ガンバの師匠(多分)、アーベルの自筆譜がゲインズバラの蔵書であった程(ひょっとしたら、ゲインズバラの為に作曲されたのかも知れない)、アーベルの死後、彼のヴィオラ・ダ・ガンバを形見に受け継ぐ程、深い関係にあった人です。
 この足元に寝ている彼の飼い犬、ゲインズバラはどうやら大好きだったらしい。
ポメラニアン種の雌犬と小犬
 あとでこの犬単体の「肖像画」をアーベルに描いてあげちゃうほど。
ポメラニアン種の雌犬と小犬
 さらに同じ絵をもう一枚描いたり。
 すんごい可愛い。可愛い。ゲインズバラ自身の思い入れもかなり混じっている感じがしますが、そこがまた可愛い。まろりー、この犬の絵を見て、その飼い主のアーベルが大好きになりました。(この理由でアーベル作曲のCDを入手してみました☆)

 しかも・・・
朝の散歩(ハレット夫妻)<朝の散歩(ハレット夫妻)>
有名なこれだけでなく
3e0daf9d.jpeg 5de5d2a9.jpeg
 左;<ウィッチコート夫人>右;<ロビンソン夫人>などアーベル以外の人の肖像画や、
木陰の散歩道(部分)<木陰の散歩道>部分
 さりげに小さく描きこんでみたり、繰りかえし描いちゃったりして。

 そこで、ふと疑問に思う訳です。
 当時のイギリス人は皆この犬を飼っていたのでしょうか。当時のイギリス社会にポピュラーな犬種だったのか。そうだったらゲインズバラが沢山絵に描くのもまあ当然、ということになってきます。

 そんな疑問に見事に答えてくれた「ゲインズバラの犬」。

 この本曰く、18世紀当時、この犬種の繁殖は殆ど知られていない。

 だそうです。
 ちなみに、犬種名は「ポメラニアン」。もともとポメラニアンは、ロシアのサモエドを祖先に持つ今よりずっと大型の犬種。200年前のポメラニアンはこのサイズだったそうです。 ちなみに、この本によれば、今ほど小型化が進んだのは、ヴィクトリア朝時代からとの事。
 さて、このドイツのポメラニア地方で多く飼われていたというポメラニアン。イギリスには余り居なかったようだから、アーベルがドイツ経由で入手した可能性もある、だってさ。 (アーベルはイギリス在住ドイツ人)

 アーベル以外の絵にも登場するからには、全く関係ない肖像画の依頼主側もこの犬が素敵だと思ったようです(笑)

 っていうかそれってゲインズバラが自主的にこのもふもふ犬を描いていたってことではないですか!周りで沢山いた訳でもないようだし、ポメラニアンを知らないイギリス人がわざわざポメ描いてって頼むはずないもの。

 ゲインズバラはアーベルの犬が大好き。アーベルのガンバに惚れた!ってゲインズバラは言うけど、この犬にも惚れてる、という妄想(笑)
 やっぱりアーベルに会うたび「お前はいっつも可愛いなもふー!」ってやっていたと思う、この人。(結論)

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