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○なんせんす・さむしんぐ○

美術や音楽の感想とか、動物中心のイラストのブログ。

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光と闇とレンブラント、光の探求、闇の誘惑展

 上野まで、かの白と黒の例の物を見に行きました!
 そう、皆様ご存じの。もちろんレンブラントの版画です。

 以下、レンブラント展の感想ですー。
 超よかった。ぞくぞくするくらい楽しかった。さすがは西洋美術館、地味ながらクオリティが違います。これは、一見の価値ありです。

 レンブラントは史上最高の明暗表現の画家であります。その多彩な明暗表現の粋を、特に色彩に頼らない明暗表現が命の版画作品において、見てみよう、みたいな展示。
 つまりは、版画が主な展示物。さりげなく素晴らしい油彩画を混ぜつつも、あくあで主役は版画。
 特に、今回の主役は、和紙に刷られた版画だったと思います。そう、和紙。和紙のようなものではなく、日本製の紙という意味の和紙。
 何年か前から、「レンブラントと和紙」という著書があり、ずっと読もう読もうと思っていたけど、今度こそ本当に読もうと思う。読まずにいられない! 読んで勉強してから展示を見に行けばよかったと激しく後悔しました。
 それくらい、和紙刷りのレンブラントの版画の出来は驚異的でした。以前、確かに和紙に刷られたレンブラント版画というものは、見たことがある。けれども、その時は、和紙というものの表現力に気づくことが出来ませんでした。あまりに普通に適当に埋没して飾られていたから。まろりーの目も大分節穴でしたが。

 版画制作も主なレパートリーであったレンブラント。一点ものの油彩と違って同じ画像が得られる版画ではありますが、作品によっては版に何回も手を加え、刷る紙を変え、インクを乗せる量を変え…色々と表現を試しました。
 今展示は、同じ作品でも違う刷りを並べて展示し、その表現の違いをとくとご覧あれ、という感じ。

 さて、和紙の問題。和紙という素材そのものについて、まろりーはちょっと詳しくないのだけれど。だから「レンブラントと和紙」読んでおけばよかった・・・。かねてから、水に強いので、水に紙を浸してから刷る銅板画によい、というくらいは聞いたことがある。
 それだけでなく、レンブラント時代のオランダならびにヨーロッパにとって、遥かなる東の国の紙は強烈なエキゾチズムだった事でしょう。なにしろ、耶蘇会通信誌によると(多分?資料はあいまい…)、その島には小人さんが暮らしていて、王様は純金のお城に住んでいるけど、民衆は木と紙で出来たおもちゃのおうちに住んでいて、謎の太った半裸の像を崇めているけど、とても器用で工芸品は天下一品といいます。うわーこの素敵なメルヘン国一度行ってみたい(笑)
 しかし、展示を見ると、そんな強度だのエキゾチズムだの舶来品のレア感・高級感だの、それだけではなかった事が分かります。(確かにそれも大いにあったでしょうけど…)
 刷りの効果が、普段見慣れた普通の西洋の紙に刷るのと全然違う。
 多分、より沢山のインクが紙の上に乗っている。より盛り上がっているというのでしょうか。その為、インクと鑑賞者の距離がほんのわずかばかり近くなって、まるで線が浮き上がっているかに見える程。
 紙自体は、西洋紙の方がはるかに白いので、白と黒とのコントラストは西洋紙の方が高いのだけど、インクが多く乗っているからか、光をよく吸収して、黒が際立ちます。
 そして、朱鷺色めいた和紙の色。色というのでしょうか、何しろ、紙自体が光を放っているかのような微妙な光沢。見る角度によって表情を変えます。
 高級なだけの価値はあるってものです。ショッキングな程、和紙の性能が素晴らしかった。

 レンブラントみたいなセコそうな人は、人気画家レンブラントの絵が沢山それなりの値段で製造できて、一度彫った原版にちょっと手を加えるだけで、手軽に新しい絵が出来上がるからって改訂版沢山刷って、インクの乗りを変えたり、オートミール紙という光沢のない茶色がかった紙に変えたり、紙より高い羊皮紙や、東洋舶来の紙に刷って付加価値を高め価格を釣り上げたり、お金持ちで熱心なコレクターにそのすべての版を買わせて荒稼ぎをしていたに違いありませんが、それだけではなかった。やはり、版画表現の可能性を追求していたのでしょう。実利を兼ねて(笑)
 どうも、出来たてでよい版が得られる最初に高級な紙で刷り、コレクター向き豪華限定版を作って、版が多少すり減ってきたら普通の紙に刷って、廉価普及版を作る、ということをやっていたようです。うーん、稼ぐ気満々。

 以下、印象に残った絵の一部。

 実は、芸術的な版画表現を追求するあまりに、そういった商売にならない?版画を制作していた人も中にはいたらしい。
 セーヘルスというこの時代の版画家は殆ど伝説的。版画なのに非常にエキセントリックな一点ものとも言える作品を作っていたそうな。
kokematu.jpg Seghers.jpg
左;ヘラクレス・セーヘルス<苔むした松>、右;セーヘルス<イタリア風景>
 凝りに凝ったセーヘルスの版画は希少価値が高く、故に高価。
 そんなセーヘルスの原版を手に入れて、改訂アレンジして刷ってしまったレンブラント。
hercules-seghers.jpgegpt.jpg
左;セーヘルス<トビアスと天使>、右;レンブラント<エジプト逃避>
 ちょっとセーヘルスは綺麗な図版を手に入れられなかったけど…。主題変わっているし(笑)しかし並べて比べてみると、レンブラントの方が、エキセントリックなえぐみが弱められて見目いいね。人物はさすがにレンブラントの方がはるかに上手…!いえ、見事なコラボレーション。
 ともあれ、そんな離れ業コラボも出来ちゃう銅板画。しかも希少なセーヘルスに名手レンブラント、しかも、展示されていたのは和紙に刷ってあった。
 余裕で油絵買えるくらい高そう。

 asse.jpgレンブラント<画家アセレインの肖像>
 風景画家、アセレインさんの肖像。
 なんともいい雰囲気の普通のイタリア風景ならびにローマの廃墟を描くヤン・アセレインさん。
asselyn.jpg Asselijn.jpg
左;アセレイン<川のあるイタリア風景>、右;アセレイン<ラバのいるローマの水道橋の廃墟>
 ・・・実はこれらの絵の正式名称知らないや(笑)まあ、特に画家が名付けたようなタイトルは無いのだけど。
 レンブラントの版画を見るに、アセレインさん、とってもいい人そうだ。なんかこう、人の良さが顔にも絵にもにじみ出ているよね。きっと。皆に好かれるいい絵を描くぞーみたいな。
 そして、このレンブラントによるアセレインの肖像版画。第三段階まであって、上に掲げたのは第1段。…2段だったかも・・・。
 アセレインさんの後ろに描きかけの風景画のかかったイーゼルが描きこんで、この人が風景画家であることが分かります。
 ところが、隣に飾ってあった第3段。このイーゼルは見事に消され、背景は真っ白にされてしまいました。となると、この絵は画家の肖像じゃなくて、ただの帽子を被って机に向かう男になってしまう。画家という職業を示さないで、ただのおっちゃんとしてのアセレイン(笑)つまりは、人物そのものが強調されているのだと思います。

 さて…色々書いていたらもう夜遅くになってしまいました。今日はこれで筆を置き、(今日書きたいことは書いてしまったので)寝ることとします。

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