書きかけだったんだけど、いい加減会期も終わってしまったので、諦めて投稿。
西洋美術館のボルドー展行ってきました。
ボルドーを含むフランス南西部のアキテーヌ地方。
そのアキテーヌ地方には、先史時代の壁画の残る代表的なラスコー以外にも、数々の先史時代の遺品が発掘されているといいます。
約6万年前の石器とか、骨角器とか、豊満な古代の女神像とか。ネアンデルタール人の遺品とか。
展示品はそんな先史時代から20世紀まで年代順に並べてあります。時間感覚が壮大(笑)
そして、わずか地下2階の1フロアで16世紀くらいまで時間旅行はぶっ飛びます。
そういえば、今回の西洋美術館は、いきなり階段を下がって始まるので、ちょっと動線にびっくりした(笑)
紀元前にはガリア人たちが住んでいましたが、ローマに征服されたので、ガリア人の武器やローマっぽい墓碑や神々への奉納石碑が遺されています。碑文の書体、格好いいなぁー。
古代ローマ時代には、ブルディガラと呼ばれ、ワインの生産と交易で栄えたのだとか。
そういうことで、ワインを入れる甕とかが展示されてます。
こんなに昔からボルドーって貿易港で、そしてワインだったんだ。
ボルドーワインのブランド力半端ない。
さて、ボルドーのあるアキテーヌ地方は、スペインと国境を接しているため、ナポレオン戦争時代には沢山のスペイン人が亡命し、その中には画家のゴヤもいて、晩年のゴヤはボルドーで暮らしました。
その他、モンテーニュ、モンテスキュー、画家のルドン、マルケなど、意外な有名人たちが実はボルドー生まれだそうです。
いや、意外というか、ざっくりフランス人だと思って、ボルドー人だとまでは考えていなかったというか。
特に、マルケのボルドーを流れるガロンヌ川の絵は、私のイメージしてたマルケとは違って印象的だった。 なんかこう、そう多くを見たことがないうえでのイメージですが、シンプルで大きな筆遣いと、穏やかで明るい中間色でコントラストも低いのにずっと向こうまで見渡す奥行きがあって、特に西洋美術館にある淡いエメラルドブルーの海の絵なイメージ。
だけど、ボルドーの絵は、もともとそんなに青くないらしいガロンヌ川が茶色く描かれていて、空もどんより。
解説には「ボルドーには幼少期の苦い思い出しかなく……故郷に対する画家の距離感が感じられる」とあって、……幼いマルケに何があった……!
18世紀からは、高級な白磁や銀の食器やエレガントな椅子とテーブル。陶器のワインボトルクーラーとワイングラスクーラー。それと18世紀のボトルとグラス。ボトルがでかい。
ナティエの肖像画の下書きや、シャルダンとド・ラ・ポルト。…ドラポルトさん、何度聞いてもフルネーム覚えられない(笑)
アンリ・オラス・ロラン・ド・ラ・ポルト《ハーディガーディのある静物画》
ドラポルト、結構好きです。画集ってないかな、ちょっと欲しい。
ド・ラ・ポルト。ドラポルトがもっと沢山見たい!
景気がいいところは画家も儲かる、ということで、ボルドーで活動した画家たちの作品。
ごめん・・・名前・・・覚えていない・・・。
18世紀末か19世紀初頭のボルドーの港の活気あふれる様子を描いた絵とか。というか、皆ボルドーの画家だったかどうか、記憶が定かでないのですが(^^;
すみません記憶違いを覚悟で以下メモ。
アエネアスとディドの嵐の洞窟の大場面や、よりシンプルな構図の新古典様式な歴史画とか。
パエドラの話?だったかな?
白い家の壁を背景に、水平に並ぶ人物たち。椅子に座る白髭のおじさんと傍らに立つ若い女。それに対峙するように、顔に影を作ってうつむきながら前を見る若い男。…もう一人誰かいた気がする?(完全忘却)背景や小道具その他には、場面を盛り立てるものは殆どないけれど、それぞれの人物表情や静止したポーズがドラマチック。
青空を背景に鷲を伴った少年が雲に乗っているのとか。
ガニュメデスの絵ですが、よくあるように、鷲に引っ掴まれて攫われている物語を描いた場面ではなく、キャラクターだけを描いたもの。青に滑らかな肌色がさえて、いかにも古典って感じの。
そんな中で意外なところにペルジーノの祭壇画。
ナポレオンがイタリアからかっぱらってきた立派なもので、聖母子の周りに聖人たちがお行儀よく立っている。突如予期せぬ初期イタリアンな宗教画に少し驚く。
と、その隣には、首を切り落とされた少年が、首の断面も生々しく、というか鑑賞者に見せつけるように自らの首を胸に抱えて歩いているルーベンス?の絵。驚いた様子でそれを見る周りの親戚の人。…そりゃびっくりするよ! 鑑賞する側もびっくり。
歩く死者は、体も白く血の気が引いていて、切り落とされた頭部の表情も血色が悪くて確かに死んでる。
キリスト教聖人の奇跡の場面。彼が殺されてもなお首を持ったまま歩いて行った場所に、人々が聖堂を立てたのだそう。こんな人が目の前に立ち現われて「改宗しろ~~」とか言い出したら、普通に改宗するわ。
で、この辺り何の文脈だったっけ…。全体にはスペインの戦争を避けボルドーに亡命してきたゴヤの銅版画や、フランス革命後の政体の不安定に揺れるボルドーの政治的プロパガンダとなった美術品などが並べられてたのだけど。
なぜペルジーノの隣にルーベンスだったか覚えてない、あは。
目玉のドラクロワは、巨大で、ルーベンスに挑み、迫力を出したいんだなーとは感じつつ。うーん、ルーベンスと比べちゃうと…。むしろルーベンスが見たくなった。火災で上部を失ったということだから、完全に残っていたら、あるいは画家が意図した通りに見ることが出来たら、また違う印象だったのかも。
消失前の簡単な模写をボルドー出身のルドンがしていて、元の構図は推察できる。ルドンは完全版を見たのだなぁ、と思うとそういうドラマの方に感動します。
そのルドンのボルドー郊外の所有地の風景を描いたものが、画家の愛情を感じて好きでした。あ、ついでにルドンの師匠?の神経質なほど緻密で、神秘的な雰囲気のある銅版画とか、あの人結構好き。
お土産はやっぱりワインがずらり。ワインの歴史が半端ないことは分かったので、飲めたら買って帰りたいものだけどね!
あっという間に影響されて、ボルドー行きたくなった。(←おそらく、この特別展における現代ボルドー市の真の狙い)