築約50年の家が出来て当初から、同じ壁に掛かり続けていた絵があります。
それが<緑の絵>。
一流ではないプロの画家の手によるもので、正式名称は知らない。<緑の絵>のタイトルは通称で、緑の絵の具が厚く筆触大きく渦を巻くように塗りたくられていることに由来します。その不明瞭な構図が、小さなころは、何が描いてあるか全く分からなかったので、緑の絵、という便宜的な、とりあえず見たままを言った無個性な名前が、普通に「その絵」を指すものになってしまったという訳です。
ようやく大きくなって、枝がアーチを成し、日を陰らせている木立がトンネルのようになって奥に向かう、その木立の隙間から柔らかく爽やかな光が射している、公園のような散歩道のような「場所」を描いた「風景画」だと気付いた、その後も現在まで、<緑の絵>はタイトルであり続けています。
そして、まろりーが生まれる前から壁に掛かっていたこの絵が、この程リフォームによって初めて降ろされたために、まろりーは生まれて初めて、この絵の額縁、黒ずんで彫刻の間に埃を満載した額縁を真剣に、ピカピカにするつもりで拭くことにしたのです。
おそらくは、<緑の絵>が画家のアトリエで完成して、額装されて以来変わることなく、ずっとそのままの額縁。まろりーは、石を模した灰色の枠だとずっと思っていたのですが、埃を拭き取ると、元の色が部分的に現れました。その色は、アイボリーホワイト!すでに3分の1は禿げて、元の木が見えてしまっているけど、この額縁って、本当は白かったのか!などと意外に思ったのもつかの間。
彫刻の隙間の奥の奥の一部分に、さらに意外なものを発見。
それは、金色の輝き。
目を近づけてよく見ないと分からない程、わずかに痕跡しか残っていない金の塗装のあと。金色の99.9%は失われていると思っていい。
・・・額縁は本来は金色だった・・・!
しかし、そう思ってみると、カビだとばっかり思っていた額縁の緑のしみも、多分、カビではなくて、金の塗料の成分と思われる銅が変質した緑青かと。
もともとは、金に縁取られていた緑の絵。まろりーが生涯もっとも目にしている時間の長い絵ながら、完成当初は、まろりーの見慣れた姿をしていなかった。
軽くショックです。
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