アントワーヌ・ヴァトー〈サヴォワの少年とマーモット(ラ・マーモット)〉
さてさて、ヴァトーのラ・マーモット。
このマーモットのつぶらな瞳に誘われて、
これが案外歴史や文化がとても深くて、
という訳で、今日は諸国を巡るマーモット使いのお話。
ヴァトーが描いたこちらの少年は誰かというと、
18世紀から19世紀にかけて、フランスでは
因みに、
サヴォワはフランス東南部、アルプス山脈に接した地域で、
普通のサヴォワ人は、アルプスの雄大な自然の中で、
彼らの典型的な職業が、マーモット廻しか、
特に、特にアルプス出身のサヴォワ人ならではな、馴らしたマーモットを音楽に合わせて躍らせるという芸は、当時のフランス人に強い印象を与えたようで、マーモットと同じ
さて、そんなぼろを纏って厳しい生活を送る貧しい子供たちですが、
もう季節は秋口か冬なのでしょうか、
そして、青の空と黄色の地面を繋ぐように、
過度な理想化はなく、背景その他で絵らしいファンタジックな雰囲気を盛り上げている訳でもなく、かといって貧しい農村出の芸人に対する同情やプロレタリア的な厳しさも勿論ない。
ヴァトーとその同時代の人達が、サヴォワのマーモット芸人というキャラクターに抱く興味そのままの視線なのかも知れない、と思うくらいの、なんと言うか直球な描き方のような気がします。
ヴァトーは、他にもサヴォワ人たちの素描が何枚も描いていて、この外国人(当時のサヴォワはフランスにとって外国扱い)に対するヴァトーの高い興味が伺えます。
もしかしたら、病弱なヴァトーには、国を渡り、自由に旅するサヴォワ人たちに憧れがあったのかも知れません。
もちろん勝手な見方。でも、こういうキャラクターとしてのマーモット使いは、ファンタジーとして十分、現代人の興味を引くと思うんだ。
だって、マーモットのみを孤独な旅の道連れとして、
うん、18世紀の話だけど、この記事の主成分はロマン主義です(笑)
まあ、ヴァトーの絵には、マーモット使いに仮託した何かしかの(性的な?)寓意があるかも、という説もあるようですが、何にせよ、サヴォワのマーモット使いが描いてあることには変わりない。
そもそもマーモットってどんな生き物かしら、
そんな中見つけたのがゲーテの詩にベートーヴェンが曲を付けたと
気になって早速ユーチューブで曲を聞いてみると
ゲーテ作詞+ベートーヴェン作曲×古楽or民俗音楽調=堪らん!
何だこれ、
Ich komme schon durch manches land,
avec que la marmotte.
Und immer was zu essen fand,
avec que la marmotte.
Avec que si, avec que la,
avec que la marmotte.
僕はもう沢山の国ぐにを越えてきたよ
このマーモットと一緒に
そうしていつも食べるものを見つけてきたよ
このマーモットと一緒に
一緒にこちら 一緒にあちら
このマーモットと一緒に
ゲーテ作の大体の歌詞は↑のような意味っぽいです。で、avec que la marmotte(マーモットと一緒に)
原語はフランス語圏の故郷を離れて各国渡り歩いてドイツにもやっ
因みに参考に付けた日本語はエキサイト翻訳参照なので、
大体、
淡々とした前半部分と、
無料でネット公開されてるピアノ譜を適当に拾って弾いてみると、
演奏は、まろりーの拾った楽譜と調が違うけど、まあこんな感じ。もちろん、チェンバロ演奏でも全く問題ない。
そもそもミュゼット形式の曲が大好きだ!
羊飼いの楽器たるミュゼットではなく、
ジョルジュ・ド・ラ・トゥール〈犬を連れたヴィエル弾き〉
この絵は、目の見えない故に定職が無く、旅する初老の辻楽師。
何だか雰囲気良いなぁー。
貧しい故郷を離れて旅をする寂しさ、
まあ、ちょっと過剰解釈のきらいもあるけど、
色々なマーモット絵があるけれど、ゲーテ作詞・ベートーヴェン作曲の歌と、
リアルすぎない、美化しすぎない。でも、ほんのり憧れがある。
アコーディオンによる軽快な舞曲風演奏は、「
みんなのアレンジ、すっごい楽しい!
歌い方、アレンジの違いで色々な雰囲気になる。でも、どれもマーモット使いっぽい。
サヴォワのマーモット使いは18世紀を通して、結構人気だったようで、例えば、
フランソワ=ユベール・ドルーエ〈デューク・ド・ブイヨンの子供たち〉
ヴァトーさんと比べると、美化が著しい。
それもそのはず、貴族の子供たちのコスプレ肖像画のようです。
とはいえ、ぼろを纏ってマーモットをハーディガーディで踊らせるサヴォワの子供たちの姿を幾分か伝えているのではないでしょうか。
ドルーエの甘ったるいとも言える、
ラ・トゥールみたいな呵責なき写実がある一方で、
故郷が貧しく、子供と動物だけで放浪しなければ暮らせないし、
もちろん、貴族のご子息様だからなんだけど。
そうだよね、子供のコスプレ写真撮るって言って、例えば海賊の格好をさせるとき、本当の海賊になってほしい親は多分いないと思うし、そこで厳しいリアリティ追求する親もいないだろうと思う…。
現実のマーモット使いどうでもいいから、
18世紀のとりわけ後半の人達にとって、
ドルーエ〈サヴォワ人としてのコント・ド・ショワズールとシュヴァリエ・ド・ショワズール〉
別の子供たちもサヴォワ人コスプレしてます。結構人気。
こいつらはゲーテとベートーヴェンのドイツには絶対行かない(
さてさて。
現代のフランス語でmarmotteを引くと
1、[動物]マーモット類:リス科の哺乳類
…中略…
6、(サヴォワ人の)マーモット使い:マーモットを見世物にした18世紀の興行師
7、(18世紀の婦人の)スカーフ:頭を包み額の所で結ぶスカーフ
(カシオの電子辞書、ロベール仏和大辞典1988より。)
18世紀のサヴォワのマーモット使いの痕跡が現代の辞書でも残っています。 ジャン=オノレ・フラゴナール〈ヴィエル弾きの少女〉
マーモットはいないけど、ヴィエル弾きならラ・
おそらくサヴォワの芸人お姉さん。(それか、
このお姉さんが被っている頬かむり、fichu en marmotte 。あるいはa la marmotte。
「マーモット被り」
(すみません、辞書の頭を包み「額で」結ぶスタイルの事はよくわかりませんでした)
フラゴナール〈マーモット風の少女〉
上のお姉さんと同一人物でしょうか?マーモット箱にマーモットを入れたお姉さん。
サヴォワの農家の女性がよく被っていたこのスタイル。シルエットも、
18世紀、牧歌的世界へのあこがれから、
18世紀当時の都会人にとって、農民の女性は、
そんな訳で、サヴォワの田舎のお姉さんが被っているというイメージだった、
それにしたって、フラゴはときどき動物の描写が適当すぎる。
何このゆるキャラ…。マーモットに見えない。でも箱の隙間からちょろっと手を出してるのが可愛い。
あくまでもインターネット調べではありますが、
マーモットスタイルについて、ほほうと思った記事がありました。(こちらのTerminology: Marmottes and the Savoyarde styleの記事。)
牧歌的な素朴さを持つ田舎娘として、
ところが、十数年の時が経つと、
それで「マーモット(=サヴォワ)風」のヘッドドレスは、
うわっ、都会は何でも人を悪くする!(←By J.J.ルソー)
雄大なアルプスに抱かれた田舎から出てきたうぶな女の子が、
本当かな。しかしとってもありそうな話だ。
はてさて。
ヴァトーの絵、ゲーテの詩、ベートーヴェンの音楽に惹かれて。
マーモットのみを孤独な旅の道連れとして、
意外な方向に話が流れてしまった…。
楽器片手にマーモットを踊らせる小さな旅芸人は19世紀まで出没してい
未読なので何とも知りませんが、ヴィクトル・
ところで、殆ど関係ないけど、旅の少年とマーモットって、
旅の少年も掛け声一つでお伴に芸(攻撃技)
18世紀のマーモット使いに感じるファンタジーが現代でも形を変
他、参考になりそうなブログ記事。
「echos de mon grenier:Jour de la Marmotte」…主に18~19世紀のマーモット使いについて。フランス語分からなくても画像たっぷりです。
「欧道行きましょっ!:リトルモンスターのコーラスから1~4」…主にベートーヴェンの「ラ・マーモット」について。