でも、貴方は知ってなければならないわ、
あたしが何かって。
あたしは、悪魔よ、
いとしいアルヴァーレ様、
あたしは悪魔なの・・・
言って、出来るだけ優しく、
あたしが貴方をもっと感じられるように。
いとしいベルゼビュート、
君を愛す、って・・・
フランス18世紀ジャック・カゾットの小説「悪魔の恋」より。毎回分かりにくいネタですみません(笑)
スペインの青年貴族アルヴァーレは、月夜のナポリの廃墟で巨大な駱駝の首の悪魔、ベルゼビュートを召喚し、見事に従えることに成功する。 因みに初版本のだというアレな(笑)出来栄えの木版挿絵
ところが、ベルゼビュートは美少女の召使いビヨンデッタに変身して、主人公アルヴァーレを堕落させようとあの手この手で誘惑してくる。アルヴァーレは相手の正体が悪魔と知っているので、抵抗しつつも次第に愛情を抱くようになり・・・
作中では、ビヨンデッタという可愛い?名前を与えられる悪魔ベルゼビュート。拒絶されてもいじらしく健気に振る舞うけど、どこまでが計算ずくなのか、それとも本当に恋をしているのか。
そして彼女は「悪魔としての本当の私を愛して」と要求する。
果たして、アルヴァーレの運命やいかに!?
という内容です。
男装の美少女に給仕してもらったり、美少女が泣きながらチェンバロを弾くのをこっそり壁の穴から覗き見したり、ヴェネツィアの娼婦に背中を刺されたり、良い雰囲気になったところで犬にコートの裾をひっぱられたり、スペインの田舎の結婚式で飛び入りでファンダンゴ(結構激しいスペインの民族舞踊)を踊ったり、ジプシーのおばあちゃんに未来を占ってもらったり、農家の納屋で二人きりで嵐の夜を過ごしたり、青い燐光を放つカタツムリで部屋がびっしりになったり、ディテールが大好きです。
フランス幻想文学の祖と言われる作品だそうです。
物語としても面白いのですが、悪魔=宗教などを信じない先進的な思想=悪徳と、旧家の青年貴族=昔からの伝統的で保守的な思想=道徳との対決がテーマらしい。
だから悪魔の方が近代的な考えをしていて、「あたしが好きなら結婚して」と迫ると、「お母様に許可してもらってからでないと」という主人公に対して「あたしは貴方と結婚するのよ、お母様じゃないわ」と言ってのける。
のちのちギロチン刑にされるほど保守派のカゾットにとっては、この啓蒙の世紀がもたらした自由な思想が、社会の秩序を乱す悪魔(しかし魅力的な)だったのだ・・・という解釈とか。
さらに最近、悪魔の恋について検索していたら、ビヨンデッタは女性形だけど、ベルゼビュートは男性形(ma shereでなくmon sherと男性形で呼びかける)なので、本当は男説っていうのが出てきました。何か話の雰囲気変わっちゃう気がするけど……そう解釈すると、そりゃ余計に躊躇うよね。
結構深読み出来る面白い小説です。
お気に入りの18世紀のフランスの小説家、ジャック・カゾット。といっても少ししか日本語訳されていないので、少ししか読んでいないのですが…。
例えば、楽器で会話する人たちの住む島に捕えられた主人公たち。脱出のとき、島民のコミュニケーション手段を奪って時間を稼ごうと、夜のうちに「ヴィオルやヴァイオリンの駒を外し、クラヴサンのジャックを全て抜く」という地味に残虐な行為を思いつくセンスが大好きです。
翌朝のクラヴシニストの絶望感とか、想像するに笑える。
カゾットは、わりとチェンバロに興味があると思うのよね。
「悪魔の恋」でも、女の子がチェンバロを弾くのですが、高さ調整の出来るピアノ椅子でなく普通の椅子に座っていて、それだと女子にはちょっと低いらしいので、分厚い本を椅子に乗っけるっていう描写があって、結構写実的だなって思ったりとか。
と、少しだけ語ってみる。
あたしは国をわたり 旅するマーモット
歌って日々を暮らす 笛吹きマーモット
あちこち どこでも 旅するマーモット
あちこち いつでも 笛吹きマーモット
寄る辺なき身のうえ 旅するマーモット
歌って今日も腹ぺこ 笛吹きマーモット
元ねたはヴァトーの「La Marmotte」。
ゲーテ作詞、ベートーヴェン作曲の「La Marmotte」が大好きすぎた勢いで描いてしまいました。
元ねたについて長文で語っている記事はこちら。むしろこっちメイン(笑)